夢小説
ずっと読んでみたいと思っていたシュニッツラー後期の作品。アイズワイズシャットの原作です。
話の筋は
- お互いの心の奥深くにパートナー以外との性的な願望を持っている倦怠期の夫婦。
- 夫はある日、深夜のウィーンでの危険で謎めいた、そして官能的な体験を通して、その願望を自覚していく。しかし、そのことを妻に秘密にしている。
- 妻はその夜、他の男と幾夜も共にした夢を見る。そして、その夢の話を、つまり心の奥底の願望を夫に伝えてしまう。
#冒頭に伏線が張ってあり、妻はその願望に無自覚とはいえ、何でそんな話をあっさり言うんやろというのが不思議です。まぁ、そうしないと話が進まないのですが。 - 当然、夫は夢の話から妻の願望を読み取り、愛が冷める。
- しかし夫は昨晩の体験の真実を深く掘り下げていくうちに今の平穏な日々の方が大切だと考え直す。
- 思い直した旦那は奥さんに体験した内容を話す。つまり、自分にも妻と同じ願望があることを伝える。
- お互いの内面を分かり合った上で今までどおりの、しかしこれまでとは異なる日常を送ることを決める。
この手の願望はきっと誰しもが多少は持っているのかもしれません。しかし、
- 今のパートナーが大切だし、敢えてお互いのその部分に触れる必要もないと感じている人
- 欲望に忠実に生き、上手いこと隠し続ける人、または形はどうあれ実質的に破綻を迎える人
- 自覚していない人(小説では妻の方)
がほとんどのような気がします。しかし、この小説の夫婦は最終的にはお互いの願望を伝え合った上で、これまでの関係を続けようとしています。
ここで、この小説を読み終えた感想
- そんなことできるん?
- 奥さん最後に物分かりよ過ぎ・・・
その後、この夫婦がどうなったかは書いてないので、そんなことできるかはご想像にお任せしますなのですが、妻の方はどないやねんという感じ。
中盤で妻から夢の話を聞いた時に少なくとも夫の中では一度、関係は終わっています。夫は夜の出来事を追求していくうちに、それでも今の生活が大切だという結論に至るまでのプロセスが描かれていますが、妻の方は夢の話をしたときは願望を自覚していないような描写があるのに最後には分かっているような描写になっている。ひょっとして妻はそこまで分かってないということにしているんでしょか?
それから余談ですが妻の見た夢で表現している願望の内容はフロイトの「夢判断」から見ても的を得ているそうです。
- 作者: シュニッツラー,Arthur Schnitzler,池内紀,武村知子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1990/11/16
- メディア: 文庫
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